呼吸についての素朴な疑問 ①話声と歌声で呼吸についてはどう違うの?『歌声の科学』より
この投稿は、話声と歌声で呼吸についてはどう違うの?という疑問に対する
ヨハン・スンドペリ『歌声の科学』榊原健一監訳 伊藤みか,小西知子,林良子訳,東京電機大学出版局,2015,pp25-49(「呼吸」の章)
という文献から得た答えをまとめたものです。他の文献で得られる知識を敢えて省いていますので、もちろん以下の文が結論や、最適解であるわけではありません。ご注意ください。
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話声と歌声の違い
目次
1.肺活量の利用度合い
2.空気流量
3.声門下圧
4.結論
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1.肺活量の利用度合い
話声では約50%の肺活量(肺の容量とは別に、実際に活用できる空気の量)が使われ、FRC(吸いたい圧力のかかる点と吐きたい圧力のかかる点がちょうど重なるところ=ちょうど息を吐きたくも吸いたくもない点)よりやや大きい肺気量(肺にある空気の量)のあたりまでが使われるが、多くの場合FRCより低い。つまり、比較的肺活量の使用に余裕があるといえる。
この値が、大きい声の朗読になると肺活量の10~70%、最大の声の朗読では15~95%になる。歌では5~100%近くに達する。つまり息を使う割合が、
話声<大きい声の朗読<最大の声の朗読<歌
となる、ということである。
2.空気流量
空気流量については話声が0.1~0.6リットル/秒との実験結果が記載されている。歌声についての明確な実験結果は記載されていないが、現実的な急速な空気流量については5リットル/秒であることが知られていると明記されている。おそらく歌唱中はテンポによって遅い分にはいかようにも対応できるといった判断のもと、0.1~5リットル/秒としてよいだろう。ここでも、話声<歌声ということが確認できる。
3.声門下圧
声門下圧について、通常の話声は6~15㎝H₂O、歌声は20~30㎝H₂Oに達することも珍しくないとの表記があった。しかし、歌声に関して、70㎝H₂Oの記録があることやスンドペリ自身の研究でもソプラノやテノール歌手により高いピッチの強い音が歌われた際同様の結果になったことがあることなどから、歌手によって、また声質区分や声種などによっても声門下圧は変わってくるのではと疑問を残している。
4.結論
以上の記述から、本投稿における結論としては、
話声と歌声で呼吸についてはどう違うの?
に対する答えとしては、ざっくりいえば歌声のほうが、使える息(肺活量)のうちより多くの範囲を用いて、声門により素早くよりたくさんの空気を通して、より強い圧力(声門下圧)の範囲まで使って呼吸をしているよ、といえば理解しやすいであろうか。さらに、章の最後には話声では呼吸器官の受動的な復元力が重要な役割を果たす――つまり頑張りすぎないおさまりの良い力を使えばよいのに対し、歌声では能動的な筋肉の働きかけが必要とも書かれている。
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呼吸に関していえば、本投稿における結果はさほど理解しがたいものでもないですね。単純に考えて、お喋りよりも歌唱のほう呼吸がタイヘンな気はします。話声と歌声の違いについて、最も注目すべき違いはどちらかといえば内外喉頭筋群の使い方ですが、歌でしか使われない筋肉、などといった区分になるのでしょうか。しばらく呼吸編が続くと思われますが、まとまり次第書いていきます。よろしければお付き合いください。